♪カフェ・ウォルフガング
秘蔵盤ストーリー

通常では入手が困難と思われるCD・レコード・テープをご紹介します。ここでご紹介するものは、カフェ・ウォルフガングで聴くことができるものです。秘蔵盤といっても、かつて市販されていたものもあり、「なあんだ、それなら持っているよ!」というものもあるかもしれません。その際はご容赦ください。また、それらに関する情報をお寄せいただければ幸いです。

 

 

第11回

モーツァルト:交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」
       ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
          交響曲第39番変ホ長調K.543
        シャーンドル・ヴェーグ指揮
        ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
        ラドゥ・ルプー(ピアノ)
                 
(1991年9月15日 ウィーン、コンツェルトハウス大ホールにおけるライブ)

 これは、FM放送のエアチェックです。1991年も「モーツァルト・イヤー」(没後200年)でした。当時ヴェーグはカメラータ・ザルツブルクを鍛え上げて、モーツァルトのセレナード・ディヴェルティメント集(CD10枚)、アンドラーシュ・シフとのピアノ協奏曲全集を録音していましたが、ここでの演奏はオケがウィーン・フィルなので、厚みが違います。また、ヴェーグの表現もセレナード・ディヴェルティメントでは、早目のキビキビとしたものでしたが、交響曲ではがらりと変わって、がっちりと構えた演奏になっています。隅々にまで気配りがされている指揮で、ちょっとしたフレーズにも強弱がつけられていてはっとさせられることが多い、聴き応えのある演奏です。モーツァルト・イヤーの年にウィーン・フィルが「オール・モーツァルト・プログラム」のコンサートの指揮者にヴェーグを選んだことが納得させられます。ヴェーグはヴァントやショルティ、ジュリーニと同じ1912年生まれなので、このときは79歳になっていますが年齢をまったく感じさせない若々しい演奏です。
 この音源は、持っている方も多いと思いますが、CD化されていないことでもあり、多くの方に知っていただきたいので取り上げました。録音もFMエアチェックのわりには、聴きやすい録音になってます。                              2006/12/28

第10回

メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調Op.90「イタリア」
シューベルト:交響曲第8番ハ長調D.944「ザ・グレイト」
(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調Op.91〜第2・4楽章
        コリン・デイヴィス指揮
        バイエルン放送交響楽団
                 
(1983年5月20日 神奈川県民ホールにおけるライブ)

 第3回と同様1983年の「ドイツ祭」の一環として行われたデイヴィス/バイエルン放送交響楽団のライブです。このコンビでの初来日、確か初日だったと思います。ベルリン放送交響楽団の常任指揮者に就任して間もないころの来日コンサートです。2曲ともバイエルン放送交響楽団の明るく緻密な音色と、デイヴィスの得意とする曲であるため、名演奏となっています。シューベルトは90年代にドレスデン・シュターツカペレとレコーディングしていますがアンサンブルは、こちらのほうがはるかに上です。第3回のときにも書きましたが、当時のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団よりも緻密なアンサンブルで、聴き応えがあります。「名曲の名演奏」といえます。アンコールはやはりベト7の2・4楽章です。
 この録音も某放送局が収録したときに、その放送局の担当者がラインから個人用にPCM-F1でデジタル録音したテープをPCM-F1デデジタル・コピーしたものです。やはり優秀なクオリティです。                                    2006/12/11

 

第9回

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番ハ短調Op.18-4
ハイドン:弦楽四重奏曲第17番ヘ長調Op.3-5〜第2楽章「セレナード」
        ゲヴァントハウス弦楽四重奏団

         ゲルハルト・ポッセ、ギュンター・グラッス(ヴァイオリン)
         ディートマル・ハルマン(ヴィオラ)、フリーデマン・エルベン(チェロ)

            
              (1969年6月19・20日 八王子市民会館にて録音)

 これは、市販された38/2トラのテープです。制作・発売したのはティアックです。当時ティアックはソニー、デンオンと並ぶオープン・リールのテープ・レコーダーを製造していました。このころの最高音質のソースということで制作したものの1つです。オープン・リールで、38cm/sec、2トラックはレコード会社のマスターテープと同じ規格で、オーディオ・マニアの憧れだったものです。トータル演奏時間30分に満たないものですが、価格は¥15,000と破格のものでした。しかしその分、音質は極上で音に余裕があり、とても滑らかです。レコードや19/4トラのテープとは一線をかくすものです。演奏も爽やかでゆとりのある演奏で、心地よく音楽に浸ることができます。                         2006/12/1

 

第8回

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
        カール・ベーム指揮
        バイエルン放送交響楽団
            
              (1977年4月4日 ミュンヘン、ヘラクレスザールにおけるライブ)

 カール・ベームとバイエルン放送交響楽団というちょっと珍しい組み合わせです。カール・ベームはウィーン・フィルとの日本公演を終えてから、1ヶ月足らずの演奏です。このころカール・ベームはブルックナーの7番を集中して演奏しているようで、前年の76年にウィーン・フィルとレコーディング、77年3月12日までの日本公演をおえて、3月24日日にはベルリン・フィルと、そして4月4日のこのバイエルン放送交響楽団、そして8月17日には、ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルと演奏しています。このバイエルン放送交響楽団との演奏は特にすばらしく、バイエルン放送交響楽団の現代的で明確な演奏がこのころの高齢のためかテンポが緩みがちになるベームのテンポを引き締めています。ウィーン・フィルやベルリン・フィルとの演奏ではもう少し重くどっしりとした演奏になりますが、この演奏は全体の演奏時間が63分強ということからも快調な演奏であることがわかります。実際終楽章に向かって盛り上がっていく演奏で、最後には圧倒されるできです。
 音質は、エアチェックテープから起こしたもののようで、アナログテープのヒスノイズが目立ちますが、ほかのノイズはほとんどなく、聴きやすいステレオ録音です。                                                 2006/8/12

 

第7回

シューベルト:ピアノ・ソナタ第14番イ短調D.784,Op.143
       幻想曲ハ長調D.760,Op.15「さすらい人」
ショパン  :24の前奏曲Op.28
(アンコール)
ショパン  :夜想曲第8番変ニ長調Op.27-2
       バラード第1番ト短調Op.23
       練習曲第12番ハ短調Op.10-12「革命」
シューマン ;アラベスク ハ長調Op.18
ショパン  :練習曲第6番変ホ短調Op.10-6
       練習曲第23番イ短調Op.25-11「木枯らし」
        マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
            
               (1974年4月25日 東京厚生年金会館におけるライブ)

 ポリーニ初来日のときのライブです。このときポリーニは今では珍しいことに、NHK交響楽団(マキシム・ショスタコーヴィチ指揮)とプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を競演し、福岡と大阪で一回ずつ、東京で2回、東京文化会館と東京厚生年金会館で計4回のリサイタルを開いています。この音源はその最後のリサイタルの全演奏曲目を収録したものです。当時32歳という若さであったポリーニの精緻な演奏を聴くことができます。1960年のショパン・コンクールに18歳で優勝後、まもなく演奏活動を中止し、1972年暮れに発売された「ペトルーシュカからの3章」ほかで鮮烈的な再デビューをし、ショパンの練習曲集で決定的な評価を受けて、初来日したときの記録です。さすらい人とショパンの前奏曲はこの来日のころにレコーディングもしていますが、シューベルトの14番のソナタは、正規録音がないので貴重です。この当時は「精密機械のような演奏で疲れる」などと一部では酷評されていたのですから驚きです。とにかくライブにおいても完璧な演奏で圧倒されます。日本での最後のリサイタルということもあってかアンコールを6曲も弾いていますが、これはまた、本番の演奏と違ってポリーニも演奏を楽しんでいるかのようです。
 録音は某放送局がライブ収録した2トラ38のマスターから、担当者の一人が2トラ38でコピーしたテープからさらに2トラ38でコピーしたテープをもとにしたものです。多少ざらつきはありますが鮮明な録音です。
(以前アンコールの5曲目をショパン:練習曲第16番としていましたが、6番の間違いでした。訂正いたします)                            2006/7/15

 

第6回

ロッシーニ:歌劇「泥棒かささぎ」序曲
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「死と変容」Op.24
ブラームス:交響曲第4番ホ短調Op.98
      ハンガリー舞曲第1番ト短調
ヨハン&ヨゼフ・シュトラウス;ピチカート・ポルカ
        セルジュ・チェリビダッケ指揮
        ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
            
               (1986年10月14日 東京文化会館におけるライブ)

 セルジュ・チェリビダッケ/ミュンヘン・フィル、1986年の来日公演のライブです。このときは3つのプログラムを持ってきました。ほかはシューマンの4番と展覧会の絵、それにブルックナーの5番です。実はシューマンと展覧会の絵のテープもあるのですがこれがなぜかよくないのです。しかし、この10月14日の演奏はすばらしい。最初の「泥棒かささぎ」から気合の入った演奏で後半ではチェリビダッケの唸り声もふんだんに聞こえます。2曲目の「死と変容」ではオーケストラの緊張が伝わってきて聴くほうも思わず緊張してしまうほどの名演です。メインのブラ4もチェリならではのじっくりとしたテンポ(演奏時間約48分)で聴かせます。特に第2楽章の30小節目からの弦がアルコで弾くところは全体の白眉とも思える見事な出来栄えです。90年代に入ってからのチェリビダッケの演奏は緊張感が薄れてきてちょっとしまりのない演奏が多くなってきたと思う(私の想像ですがチリの耳が遠くなったのでのではないか?)ので、このころの演奏は余計見事です。
 録音は某放送局がライブ収録した際に、担当者の一人がラインから個人用にソニーのPCM-F1でデジタル収録したテープを直接デジタル・コピーしたものです。したがって極めて鮮明な音です。これも大事な音源のひとつです。                            2006/7/7

 

第5回

ヴェルディ:レクイエム
        ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
        ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
        ウィーン国立歌劇場合唱団、ソフィア国立歌劇場合唱団
        ミレルラ・フレーニ(ソプラノ)、アグネス・バルツァ(メゾ・ソプラノ)
        ホセ・カレーラス(テノール)、ルッジェーロ・ライモンディ(バス)
            
        (1980年ザルツブルク音楽祭8月27日 祝祭大劇場におけるライブ)

 ORF(オーストリア放送)オリジナル・シリーズ3.ライブで燃えるカラヤンの壮絶とも言える演奏です。カラヤンのライブでは1982年のベルリン・フィル100周年のコンサートでの「英雄」が熱気あふれる演奏の代表的なものですが、このヴェル・レクの演奏の熱気はそれを上回ります。その年の暮れか翌年の春にFMで放送されたと思いますので、聴いている方もいるでしょう。緊張の中で1曲め「レクイエム」が始まり、カレーラスをはじめとしてソロが登場するところでは、白血病を発病する前のカレーラスが思いっきり声を張り上げて歌いだします。つられてかほかの3人も全開で歌っています。2曲目の「ディス・イレ」ではティンパニがフライングしてそろわなかったりしますがものすごい迫力ある演奏です。これに比べるとビデオでも発売されている1984年のウィーン・フィルとの演奏は抜け殻のように聴こえます。私はこの演奏を聴いて、それまであまり好きではなかったカラヤンの演奏を見直すことになりました。
 録音もオーストリア放送が収録し、制作した4巻組の2トラック38cmのテープからダイレクトにDATにコピーしたものなので、極めてクリアで優秀な音質です。秘蔵盤の中でも1・2を争う大事な音源です。                                 2006/6/28

 

 

第4回

シューベルト:歌曲集「冬の旅」D.911,Op.89
        ハンス・ホッター(バス=バリトン)
        コンラート・リヒター(ピアノ)
            
(1982年6月24日 ホーエネムスのシューベルティアーデ、ホエネムス城騎士の間におけるライブ)

 ORF(オーストリア放送)シリーズ2.1909年生まれのハンス・ホッター73歳のときの演奏です。ホッターの「冬の旅」は1942・3年ラウハイゼン(P)、54年ムーア(P)、61年ウェルバ、と69年ドコウビル(P)との東京文化会館でのライブと、4種類の録音が遺されていますが、これはさらに13年後のライブです。さすがにお年のせいか、高音が怪しかったり、音程にふらつきがあったりします。しかし、懸命に歌っているというか、ホッターの誠実な人柄が伝わって熱唱で心に迫ってくる演奏です。
 この録音はオーストリア放送が収録し、制作した2トラック19cmのテープからダイレクトにDATにコピーしたものです。したがって放送のエアチェックとは違って音質も優秀です。近いうちに、「水曜コンサート」で取り上げる予定です。                                 2006/6/23

 

第3回

モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調(ノヴァーク版)
(アンコール)
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調Op.91〜第2・4楽章
        コリン・デイヴィス指揮
        バイエルン放送交響楽団
                 
(1983年5月21日 東京文化会館におけるライブ)

 「ドイツ祭」の一環として行われたデイヴィス/バイエルン放送交響楽団の東京文化会館でのライブです。このコンビでの初来日、確か2日目だったと思います。このコンサートは、私も実際に会場で聴きました。アンサンブルがとてもよく、その年の秋に来日したカラヤン/ベルリン・フィルよりも上質のアンサンブルでした。「ジュピター」では弦の編成が12・10・8・6・4の40人編成で、本当にきれいなアンサンブルでした。ブルックナーでは当然編成が大きくなり、分厚いブルックナー・サウンドを堪能することができました。デイヴィスの指揮はかなり細かいところまで指示していましたがそれでも全体を見失うことはなく、アンコールのベト7のノリノリの演奏まで楽しめました。
 この録音は某放送局が収録して放送しましたが、当店にあるものはその放送局の担当者がラインから個人用にPCM-F1でデジタル録音したテープをPCM-F1デデジタル・コピーしたものです。したがってマスターと同等の優秀なクオリティで聴くことができます。しかも、放送のときは、ジュピターでは「時間の都合で第1楽章提示部の繰り返しを割愛」して放送。またブル7では第1楽章179〜180小節目のフルート・ソロが吹きもれていて、終演後に観客がいなくなってから、この部分を収録しなおして、編集して放送した事実があったのですが、これもオリジナルの状態で保存しています。ナオ、デイヴィス/バイエルン放送交響楽団のブル7はオルフェオからミュンヘンでのライブが発売されていて、第2・第3楽章の順序が入れ替わってますが、このときの演奏は通常通りの演奏です。                                                2006/6/1

 

第2回

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」
        アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ(ピアノ)
        セルジュ・チェリビダッケ指揮
        スウェーデン放送交響楽団
                 
(1969年5月スウェーデン音楽祭?におけるライブ)

 この録音の存在についてはご存知方が多いと思います。1970年の1月にNHK-FMで放送されたもので、5・6年前にドイツ・グラモフォンから正規盤が発売になるといううわさも流れました。(1973年ころに日本コロムビア社からカナダ・ロココ原盤でLPが発売されたことがありますが劣悪な音質のモノーラル録音でした。)
演奏は、まさに白熱の名演といえるでしょう。ミケランジェリとチェリビダッケの間で互いに主導権を争うような青い冷めた火花が飛び散るようです。演奏時間約39分とテンポも後年のチェリビダッケ特有の遅いものではありません。第3楽章でミケランジェリのミスタッチもありますがそんなことは問題にならない聴き応え十分の演奏です。カフェ・ウォルフガングにある音源はNHKから直接オープンリールでコピーされたテープを入手した方が後年CDを自主制作され、そのCDからDATにデジタルコピーしたものです。良好なステレオ録音です。                     2006/5/25

 

第1回

モーツアルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
        マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
        カール・ベーム指揮
        ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
                 (1977年8月17日ザルツブルク祝祭大劇場におけるライブ)

 ORF(オーストリア放送)オリジナル・シリーズ1.ザルツブルク音楽祭のライブです。ドイツ・グラモフォンから発売になっているCDは、1976年4月に、ウィーン、ムジークフェラインザールでのスタジオ録音で、これはその1年後のものです。ベームとウィーン・フィルは77年の3月に2回目の来日をしています。76年のスタジオ録音よりポリーニとベームの息もあっておりすばらしい演奏です。ベーム晩年の指揮ですが、このときは調子が良かったのかウィーン・フィルからいい響きを出させています。
 録音はきわめて優秀です。というのも、この音源はORFが制作した2トラ38(2トラック38cm/sec)のアナログテープをSTUDERのA80という業務用のオープン・リール・デッキで再生し、ソニーの業務用DAT,DTC7030でコピーしたDATなのです。ORFの録音はNHK-FMの放送で聴くと高音質でないことが多いのですが、70年代のころは、ORFから送られてきたアナログテープから解説を加えた放送用のテープ(2トラ/19らしい)を起こしているためのようです。♪カフェ・ウォルフガングにあるテープはORFのテーマ・オルゴール、ザルツブルク音楽祭ファンファーレ、ドイツ語・フランス語・英語によるアナウンスがあってから演奏が始まるという構成になっています。この8月17日のコンサートの後半の演奏曲目「ブルックナー:交響曲第7番ホ長調」のテープは入手できませんでした。ベームの調子が良かっただけに残念です。(音質は劣りますがNHK-FMで放送されたものの2トラ19エアチェックは入手ずみです)    
2006/5/19

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