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祐里と美緒は外れに見つけた一軒家に身を潜めている
6時の放送が終わり、野々原、成瀬、上石姉妹の退場が発表された
禁止エリアの追加も告知されたが、今祐里と美緒がいる場所は当面問題なさそうでそこは一安心
後は竜也と光が合流するのを待つだけという状態

「晩御飯は竜と光が来てから作ろうか」
家に着いたときに祐里がそう言って美緒は頷いたのだが、1時間くらい経過しても未だ竜也と光は現れない
遅いねと祐里が思わず呟くと、美緒はちょっと思案顔

「何かあったのかも知れないね。探知機持っているんだし、割と一本道だからここまで時間がかかるとは思えないんだけど」
言って、あまり自分たちがいる場所も安全ではないんだよなと改めて実感
早く合流して、もう少しいい場所に移動したいところ

「どうしよ。迎えに行ったほうがいいのかな」
祐里が思わずそう呟くと、美緒はまたしばし思案顔
もし何かがあったと確定してるなら、祐里が言った通り探しに行くのが正解だが...

「とりあえずもう少し様子見ようか」
美緒がそう言うと、祐里はちょっと不満そうな様子
口を尖らせ、明らかに美緒の返答に異議を唱えたそうな雰囲気を醸し出す
美緒がそれで促すと、祐里は小さく頷く

「光ならともかく、竜だったら絶対迎えに行こうって言うのになーって思っただけ」
祐里がそう言ったのを聞き、美緒はだろうねと感じて思わず苦笑する
否めない。すぐに美緒はそう思った
人見知り甚だしいくせに、仲が良くなった相手には自分のことをほっぽってでも庇おう、助けようとするのが竜也であることを美緒は知っている

「まさかだけど。竜と光、2人で駆け落ちしてないよね?」
祐里が小さく笑いながらそう呟くと、美緒はすぐにそれを首を振って否定する

「さすがにそれはないと思うけどな。もしそうだったら竜也にさっき振られてる私の立場がないよ」
美緒がそう自嘲するのを聞いて、祐里はえ?という感じでちょっと驚いた様子

「竜はてっきり美緒のこと好きなんだと思ってた」
“振られた”の意味を勘違いしたのか祐里がしみじみ呟いたのを聞いて、美緒はまた苦笑する
むしろそれはこっちのセリフと思いつつ、ふと思ったことを口に出してみる

「祐里と光ちゃん、私以外に竜也が仲が良かった女子って誰かいた?」
聞かれ、そもそもあいつ友達少ないじゃんと思った祐里だったが、やがて一人の少女に思い当たる

「一人だけ...いたなぁ。中1から中2の時に、同じ図書委員だった子」
言って、祐里は急に何かを感じ取った

「まさか、あいつ今でも図書委員やってるのって...?」
祐里が思わず呟くと、美緒はすぐにそれに呼応するように頷いた

「きっとそう。理由はわからないけれどね」
それで美緒も、もしかしてという思いが募りだす
竜也の心は既に決まっていて、それは...

「いつも髪ぼさぼさでさ、寝起きみたいな目をしてる子。クラスではイジメられてたみたいだけど、私が知ってるその子は笑顔の素敵な可愛い子だったよ」
ちょっとぽっちゃりしてたけどね、と続けて祐里は懐かしいのか遠い目をしている
美緒は美緒で何で今それが気になったんだろうと思いつつ、改めて一人落ち込む結果になってしまった
もしもの仮定が、どうやら事実な気がしてきている

「けど、それがどうかしたの? 竜が好きなのは美緒でしょ」
祐里が揶揄いながら言ったのを聞いて、美緒は思わず噎せる
どこをどう考えてもそうはならない。お互いの“初恋の人”だったのは間違いないが、今どうなっているかは美緒が分かることではない

「何か腹立ってきた。これ飲んでいいかな?」
祐里はそう言って、いつの間にか冷蔵庫から取り出して来た“麦のジュース”を見せると、美緒は小さく首を振ると同じように立ち上がって冷蔵庫へ向かう
間もなく美緒の手には“贅沢搾り”があったので、祐里は思わずニヤリとする

「カンパイする?」
祐里にそう言われると、再び椅子についた美緒は静かに首を振った
テーブルに贅沢搾りの缶を置くと、竜也が来てからねと言ってふふと笑う

すっかり家の中も暗くなってきたので分厚いカーテンをかけてから、小さく電気を灯してみる
外に漏れてないかは微妙なところだが、暗闇の中にいると気が滅入りそうと言って祐里が電気をつけ美緒もそれに反対はしなかった

「いいね。祐里は色白でさ」
私は地黒だからなーと自嘲しつつ、不意に美緒がそう呟くと祐里はキョトンとした表情
いきなり何?と素になって返すと、美緒は遠い目をしている

「竜也がさ、前言ってたじゃん。好みのタイプの話でさ。色白の子が好きなんだとか言っててね」
だから絶対日焼けしないように苦労してるんだよと言って苦笑してる美緒に対し、祐里はちょっとしたポーズを取って見せるが、すぐに右手を振ってそれを否定する

「言うて、あいつは美緒のこと好きだからそんなの気にしてないと思うけどな。私は単に色が白いほうが自分で好きなだけだからね」

決して竜也のために色白をキープしてるわけじゃないよと強調して、あははといつもの笑みを浮かべる
早く来ないかなー、お腹空いたよと続けた

それが羨ましいんだけどね、と美緒は一人呟くとまた思案顔
そうだ! と思ってスマホの例のゲームを起動しようとするが、しっかりと対策をされた後
まるで起動する気配はなく、あちゃーという表情を思わず浮かべる
祐里がそれに気づき、どうしたの?と聞いてきたので、その旨を伝えるとマジかと思わず呟く
同じようにスマホを開き、ゲームを起動しようとしてやはり同じ結果になった

「やっぱ気になるわ。私ちょっと外に出て待ってみるよ」
美緒が止める間もなく、祐里はさっと家を飛び出していく
やれやれという感じで、美緒はその背中を追った。外で待つのはいいけど、ここから離れちゃダメだからねと呟きながら
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