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「さて、それじゃ僕が抽選BOXで引いた順にここから出て行ってもらうよ。全員が出て行くまでは攻撃しないように言ってあるし、君たちが攻撃しても失格だ」
よくわからないまま、安理主宰の催し事が始まろうとしていた
そんな時、ずっとしかめっ面で様子を伺っているように見受けられた川野優雅が起立した
背こそとても低いが、なかなかのイケメンでナイスガイ
曲がったことが嫌いな直情的な優雅が何を言うのか、悠希は内心期待していた

「この場を凍り付かせている緑川安理です」
いきなり斜め上のボケをかましてくる優雅にクラス全員が思わずずっこけたが、優雅は真顔のまま続ける
「こんなことして、何の意味があるんですか」

あまりの正論に悠希は内心ぷっと笑ってしまった。確かにそう、何の意味もない(小島よしおism)
一瞬たじろいだ様子の安理だったが、やがていつものバカにしたような目つきで優雅を”優雅”に見下ろした
「僕はね、貧乳が大嫌いなんだよ。ただそれだけだ」

堂々と性癖を公言する安理にクラスの女子陣はドン引き。しかも全然回答になっていないという
優雅の視線はどんどん鋭さを増していった
「先程も言いましたが、これに何の意味があるのか。それを答えて頂きたい」
怒りの収まらない様子の優雅だったが、目の前には強面のファレが迫ってきて威嚇し始めた
それを受けて、優雅の”パートナー”の鷹見玲奈が懸命に宥めていた
多分めんどくさくなったか、どうでもいいと思ったんだろう。きっとそう

やがて渋々と優雅はその場に腰を落としたので、ちょっとビビっていた安理は満足気に頷いた
「では始めるとしよう。まずは、ラッキーセブンって。ちょうどいい、川野と鷹見、君たちからだよって、ごめん。言うの忘れてたんだが」
そう言って、安理は生徒たちに”アプリ”を入れるようお願いしてきた

君たちのスマホのアプリストアで、『緑川』と検索してくれたまえ
そうすると、今回のアトラクションが分かるから。愚民の君たちでもわかるというわけさ。神である僕からの優しさだよ

遂に神に昇華してしまったようだ
もう面倒になったのだろう、誰も安理の言動を気にも留めていない
とりま”アプリ”を入れてみると、これがまた酷い

『プロレス王地獄』だの、『砂地獄』だの、『謎解き地獄』だの。。
もうこれ、ただの緑川の暇つぶしじゃねーか。悠希はそう思って苦笑していた

そんな時だった、不意に光が小さく挙手をしたので安理はちょっと驚いた感じだったがやがて発言を認めた
「もし、私たちが勝った場合はどうなるんです?」

せやった、そっちのことは全然提示してなかったじゃん。と改めて思った
始まる前から負けること考えるバカいるかよ! 出てけコラ!

安理はフフフ、ハハハと悪役そのものの笑い声を上げた。つられて香純もおほほとこれまた悪女の笑い声
もうあんたら、悪役楽しんでるんでしょ。これマジ

「さすがは才女さま。面白いことを言うねぇ。考えてもいなかったが...そうだね、勝ち残った人がいたらその人の願いを何でも聞いてあげようじゃないか」
自信過剰すぎる安理に、これはもう死亡フラグ立ってるなと悠希は感じていた
悪は滅びるんだよ、悪は

とりあえず、渋々という感じで優雅&玲奈ペアから出発
食料などは、”屋台”が出てるからそこで好きにしてくれとのお達しなので配布はなかった

順々にどんどん生徒たちは”教室”から出されていき、いつの間にか悠希&光の番になった
「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ」
悠希があまりにも軽い調子で言ったので、5人はそれぞれ失笑気味

「なぁ待て。どうせだし大人数でしゃれ込もうじゃないか。わかる場所で待っててくれ」
信嗣がそう言ったので、悠希が返事をする前に光が「わかりました」と返事をしていた
「さすがは杉浦のラマン。気が利くぜ」
信嗣がまたも大声でぶちかましたので、今度は祐里と麗羅の合体技”マジックキラー”で信嗣を蹴散らしていた
いや、マジで信嗣死ぬぞこれ

「おい杉浦、早く行ってくれたまえって...今日のパートナーはまな板じゃないのか」
安理が感心したようにそう言ったのを聞いて、祐里がどこからか取り出した硬球を藤浪よろしく安理の頭部に投げつけた
102マイルと表示され、場内から温かい拍手が送られていた
やればできる!

まともに顔面に直撃しもんどりうって倒れる安理に対し、”蛍の光”が流れ出したので場内から再び大歓声が上がった
「酷いことするのね。これ以上王子が頭がよくなったらどうするの!」
安理の介抱をしながら香純はご立腹だったが、特にお咎めはなかった
それはそう。DQマッチだからね

安理は一時離脱になったので、それ以降の司会進行は樋口が担当することになった

何となく出発のタイミングを逃してしまっていた悠希だったが、樋口が再び促したのでしゃーねー、行ってくるわと祐里たちに手を振って立ち上がった
すれ違いざま光が樋口に対し「今日も履いてないんですか?」と唐突に言い放って、唖然とする樋口の返答を待たずに悠希と共に教室を後にした

教室を抜けると、そこはただの無人島だった
いや、違う。テーマパークよろしく、いろいろな”アトラクション”のような建物が無駄に造られていた
先に出発した生徒たちは、呆れた様子でそれぞれ佇んでいる。なんぞこれ、と
さしもの川野優雅も苦笑を隠しきれないでいた

悠希と光が唖然として周囲を見渡していると、すぐに祐里と麗羅もやってきた
そして悠希たちと同じ感想。なんじゃこれはー。。ってやつ
間もなく信嗣と蒼穹もそこに到着。6人揃って、どうすんのこれ状態になった

「ある意味...遠足よね、これ」
蒼穹が感心したような、呆れたような口調でそう呟いた

祐里は教室の外に立っていた金髪で髪がとても薄い”兵士”の人にスマホを渡して、6人での記念撮影をお願いしていた
「◎$♪×△¥○&?#$!」
金髪はそう言ったように聞こえたので、祐里は???と困った様子
「おい本間、何言ってるかわかんねーって」
その横にいた、チェーンをぶら下げた強面なのに人の良さを隠しきれないごつい男がそう言って笑っていた
「ほら、並んで。ポーズ取って」
チェーンの男がそう促して、悠希たちはそれぞれポーズを取り始める
信嗣はいつもの合掌ポーズ。蒼穹はなぜかMXポーズ、祐里と麗羅は右拳を合わせるいつものアレで、悠希は片膝をついての見開きポーズ。そして光は...信嗣の後ろからチョークスリーパーをかける真似をしていた
予期せぬ行動に本間と呼ばれた男と、チェーンの男も大うけ。周囲で見ていたほかの生徒もそれぞれ笑っていた

「◎$♪×△¥○&?#$!」
はい、チーズと言っていたらしい。間もなく本間がボタンを押して写真撮影が終了
撮り終わった写真はブレ一つなく完ぺきだったので、祐里は本間にお礼を言った
麗羅はどこからか調達してきたチョコバナナをチェーンの男に渡すと、「サンキューな」と非常に喜んだ様子だった

そして、いつの間にか生徒全員は教室から出払っていた


さて、決戦の時はこのあとすぐ!!
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