「じゃあ、まずは謎解き地獄に行きましょうか?」
光が悠希にそう促した。悠希はまあ、光に任せとけばいいんだろうなーと思って同意しかけたが...
「ちょっと待った!」
往年のアレ、ちょっと待ったコールがかかった
悠希がその声のした方向を見ると、”クイズ王”こと有沢拓司と”知識王”木野紗彩の姿が目に映った
「光ちゃん、ここは僕に譲ってくれないか。君だけならともかく、相棒が彼なら頼りない。それに比べて僕のパートナーは木野ちゃんだ。まあ悪いようにはしないから」
自信満々の有沢に対して、光は悠希のほうをちらっと見た
いいんじゃね、好きにさせてやれば。悠希は口には出さなかったものの、目でそう訴えてみたところ、光はすぐに納得したように頷いた
「わかりました。お任せします。その代わり失敗したら許しませんからね」
クールにそう言ってのける光に対して、有沢は余裕綽々に頷いた
手持ち無沙汰になった悠希に対し、祐里がどこぞへと手を引っ張って行った
「ねえねえ、ここ面白そう。行きましょう」と
いや、面白いとかそういうのじゃないでしょ。悠希はそう思ったが、気づいた時にはもう”地獄”へ連れ込まれていた
その後に続くのは麗羅、光。そして信嗣と蒼穹
待て待て待て、ここはどこだよ
悠希がそう看板を見ると、書かれていたのは...『プロレス王地獄』
マジっすか
いつの間にか悠希はリングに上げられていた
目の前に対峙するのはスキンヘッドにストロングパンツの強面の男
いや、俺これ死ぬだろ...
そう思った瞬間、悠希はすでにアキレス腱固めを決められていた
「折るぞ、折るぞー」
そう楽しそうに叫ぶのはプロレス王。いや、不思議なくらい痛くはないんですけど。つか動けませんよこれ
「杉浦、大丈夫か」
信嗣がいつもの感じで叫んでいるが、悠希はどう返していいかわからなかったのでとりあえず両手でバツ印を作ってみせた
いや、痛くはないんですよ。ただそれを告げると怒りの逆鱗に触れそうで嫌ですし、おすし
そんな時だった
いつの間にか祐里がリングの上に上がっていた
おい、待て待て。それはさすがにまずいだろと悠希が思った瞬間、プロレス王は悠希からアキレス腱固めを外して祐里と対峙していた
プロレス王が祐里を威嚇した直後の出来事だった
”必殺”、祐里の殺人ビンタがプロレス王の顔面を張っていた。思わずふらつく王に対し、さらに追撃のもう1発の殺人ビンタ
完全にぐらついた王に対して、今度は信嗣がロープを利して助走をつけたラリアート一閃
『パンピング・ボンバー!!!(ミラノさんism)』
王はKO寸前となっていた。信嗣はそれを見て、悠希にしきりと合図を送る。え、何。まさか? いや、まじかって
えぇい、ままよと悠希は王に対して逆上がり式DDT”デスティーノ”を敢行した
帰宅部とは思えないジーニアスな身のこなしでそれは綺麗に決まり、ついでにフォール
赤い靴のレフェリーがマットを叩き、1,2,3でまさかのピンフォール勝ちとなった
その判定にプロレス王は怒り狂った
どこからかパイプ椅子を取り出すと、悠希や信嗣、祐里に対して「危ないから下がってて」と小声で促した
それからリング外で見守っていた”セコンド”に対して暴行を加え始めた
とりあえず一通り殴った後、プロレス王はどこからか取り出した『印』を悠希に手渡した
「今日からお前がプロレス王だ」
そう言い残して、またセコンドをひたすら殴りながらその場を去って行った
舞台裏で待ち構えていた安理がプロレス王にクレームをつけると、王はパイプ椅子を持って威嚇したので安理は素早く撤収して行った
「女、子供相手に本気を出せるか。バカが」
プロレス王はそう言ってニヤリと笑った
「ゲェ、やられたー」
一方の”謎解き地獄”では、有沢が車田落ちよろしく轟沈していた
頭を抱える木野ちゃんを尻目に、有沢はどこかへ拉致されていく
取り残された木野ちゃんに対し、人のよさそうなこんにゃくみたいな中年紳士が現れた
「我々は殺し合いをしてるんじゃない、わかってください」
非常に滑舌がよろしくなかったが、きっとこう言っていた。そしてそのまま、”ドラゴン”は木野ちゃんをどこかへ連れて行った
那須野天珍は教室裏で待機していた
”キック”に自信があったので、ま・ず・は樋口とファレを襲撃しようと考えたのだった
期待通りにすぐヒグチが現れ、そしてファレ
まずは樋口をKOしてやろうとのことで、不意打ちのハイキック一閃!のはずが、それはファレの腹に当たっていた
「...何だこれ。ハエでも止まったのか?」
挑発的な言動で、腹を掻くファレに天珍は激高した
ミドルキック、ハイキックと連発するが、「かいーの」で済まされてしまった
さすがに動揺する天珍を、ファレは軽々と持ち上げた
両手を広げたまま、高い高い状態から天珍のパートナーの郷力夜目に向かって投げつける”超ベリーバッド”フォール
「前園社長に言いつけてやるからね」
郷力はそう捨て台詞を吐いてからKO、天珍は生まれたての小鹿状態になってしまったのでどこからか現れた”会長”によりレフェリーストップがかかった
天珍は有沢と同じように拉致されていき、郷力はファレによって海に捨てられていた(その後スタッフが回収しました)
早くも2チームが消える波乱の展開に、スタッフルームで見ていた安理は笑いを隠せなくなっていた
「まあ郷力はいらんね。あいつの裸エプロンなど見たくないから、ファレくんの行動は完璧だ」
”じゃあ誰のなら見たいの”
そうどこからか聞こえたので、安理は思わず答えてしまった
「そりゃもちろん、パイパイでか由美里こと平盛でしょ。あとは近藤天音。彼女も立派なものを持っている。あとは...」
そこまで言ってから、安理は突然嫌な予感しかしなくなった。あれ、さっきのあの声ってもしかしなくても、と
「王子、地獄と涅槃、どちらに逝きたい?」
満面の笑みを浮かべて、包丁を握っている香純の姿が目の前にあった
「おい、ちょっと待ってくれ。って、どっちも僕は死ぬじゃないか!」
そう言って慌てて逃げだす安理を、ろうそく2本を鉢巻きで巻いた状態で香純は追いかけ始めた
「イッペン、死んでミル?」
(残り12組)