このプログラムで、すべてを終わらせる
落合友梨恵は強い決意で最初から挑んでいる
私は本気です。3日間ですべてを終わらせる覚悟です。過去を破壊するのはそれからにします
友梨恵の決意は揺るがない
支給の武器が水鉄砲でさえなければ全員を叩き潰すつもりだったのだが、今持っているのは民家からくすねた包丁とバタフライナイフだけ
物置なども漁ったが、めぼしい武器はまるで見当たらずに包丁とナイフの二刀流
貧相な体格、画像などで修正しまくってグレイになってしまうルックスを誇る友梨恵だけに、この武器だけで殺戮マシンになるのは無理がありすぎる
クラスメイトで仲がいいといえるのは、せいぜいメンヘラ仲間の原間日登美だけ。しかも彼女は合流する前に、すでに死んでいることがわかった
とはいえ、別に合流するつもりがあったわけでもなかったので落ち込んではいない
「一人しか生き残れない」このプログラムなら、誰も信用してはいけない
元から人を信用しないことに定評がある友梨恵だけに、今の状況は苦になることはなかった
支給の食糧がやっすいパンと水だけなのも、友梨恵にとってはむしろ好条件
ド貧乏な食生活にも定評があり、ひたすらうまい棒で食いつないだ経験豊富を生かせばこのサバイバルも何も問題はない
包丁とナイフを強奪した際に、しっかりとうまい棒も回収しているので準備万端
まさに、「今、その時は来た状態」である
大丈夫、携帯とWifiと電気と水道が止まる生活をしていた時に比べれば、食べ物と水がきっちり確保できる今のほうがよっぽど楽
前向きなのか、後ろ向きなのかよくわからない考え方の友梨恵だが、このプログラムを勝ち残れば今後の生活が保障されるわけでモチベーションは限りなく高い
殺戮意欲に溢れている友梨恵なのに、何の因果か誰一人として遭遇していない
相手が誰であろうと、「やってやるって」な気分なのに
元から存在感が薄いのが、この状況下でも生きているとは本人も知る由がない
かといって無駄に歩き回るほどの体力もないのが現実で、木陰で身を潜めて誰かが現れるのを待っている。ただそれだけ
体力がないと言っても、公園で6時間バドミントンを場合によっては辞さない友梨恵
民家で食べたサンドイッチが、自分で作ったとはいえ余りのまずさに辟易したのはついさっきの出来事
私がこんな惨めな思いをしているのに、他の生徒はいいものを食べていると思うだけで腹が立ってくる
風向きのせいなのか、美味しそうな匂いが漂ってきていたりもする
その匂いの方向を辿って襲撃することも考えたが、そこまでの度胸がないのも友梨恵だった
そんな時、木々が揺れる気配を感じた友梨恵はその方向に振り向く
やがて2人の影が見えてきたので、友梨恵はチャンストウライ(2008年佐賀記念勝ち馬)と意気込む。
しかしその影2人・黒潮次郎と真能英興が、それぞれやばそうに見える武器を持っているのが見えてくるにつれ、意気消沈しかけたが、これはうまくいけばと内心ほくそ笑んだ
ここは演技で、素知らぬ顔して相手してみよう
英興と次郎は、それぞれ友梨恵を見てかなり驚いた表情を浮かべる
そらそうだ、真っ暗な空間に”グレイ”がいるのだから
そして友梨恵も、さも驚いたような表情を浮かべつつ、いきなり命乞いを始める
「お願い、殺さないで」
いきなりそう言われたが、そもそも最初からそんなつもりはないイケメン2人。そのまま友梨恵をやり過ごそうと、互いに小さく頷いてその場を去ろうとする
しかし友梨恵は、それだと困るとばかりに2人に泣きつく
「お腹空いて死にそうなの、助けて」
すがるように次郎に友梨恵がそう言いながら抱きつくと、次郎はあからさまに困惑した表情を浮かべる
それで英興は哀れに思ったのだろう、自分のリュックからお手製の”おにぎり”を取り出すと、それを友梨恵に手渡す
受け取るやいなや、恐ろしい勢いでそれを食べ終える友梨恵の様子に怯えつつ、
次郎と英興はさっさとこの場から去ろうとしたが、すぐに友梨恵がまた呼び止める
「お水....飲み物をちょうだい」
恥も外聞もない。乞食のようにすがる友梨恵に対し、今度は次郎がリュックから取り出したペットボトルの水を手渡す
友梨恵がそれを飲み始めると同時、次郎と英興は足早にその場から去ろうとしたが...またしても友梨恵が次郎にしがみついてくる
「怖いの。お願い、一人にしないで」
いや、そう言ってるお前の顔のほうがよっぽど怖いんだがと思った次郎と英興は互いに顔を見合わせ、もう面倒なのでそのまま無視して立ち去ろうとする
しかし友梨恵は諦めることを知らない。天がくれた千載一遇のチャンス。いつ寄生するの、今でしょ(林修ism)
友梨恵は英興にしがみついていた
しがみついたと同時、英興のマシンガンをどさくさ紛れに奪おうとしていたがさすがにそれは阻止された
「勝手にマシンガン触らないで」
思わず素になって英興はそう言って、友梨恵を振り払おうとする
しかし恐ろしいほどの執念で、友梨恵はマシンガンだけじゃ飽き足らずに次郎のグレネードランチャーまで奪おうとする
「来ると思ってた。しょうがねえな」
次郎の表情が変わった。いつものお茶らけた様子は一気に影を潜めた
英興に目で合図を送ると、次郎は友梨恵を力強く振り払う
弾き飛ばされた友梨恵だったが、すぐに起き上がると悪鬼や夜叉のような表情で再び襲い掛かってくる
「欲しがりますねえ」
英興はそう言って微笑むと静かにマシンガンを友梨恵に向ける
「ここからもっともっと上を目指して走り続けます」
言って、次郎も同じようにグレネードランチャーを構える
「私は運がいいです。今日つくづくそう思いました』
そう叫びつつ、友梨恵はグレイを通り越して般若の様相で二人めがけて羽ばたいて来ている
”圏外圏外圏外 僕ナイスガイ”
英興と次郎は同時に発射した。至近距離からマシンガン、そしてグレネードランチャーの放射を喰らってはさしもの友梨恵もグレイのままじゃいられなかった
ミンチでもなく、もうただの肉片
宇宙人から肉片へ一瞬でデューダ成功してしまった
「いーけないんだ、イケメンだ」
英興はそう言って笑いながらマシンガンの構えを解くと、いつものように次郎とがっちり握手を交わす
他人の厚意に付け込もうとした落合友梨恵はあっけなく散った
イケメン2人から食べ物と水を施されたのに、それで飽き足らず銃を奪おうとするその執念は素晴らしかったが、あまりにも強引すぎた
友梨恵(´;ω;`)かわいそうですとは決して思われない、あまりにも無惨で無様すぎる結末だった