木上優樹菜は島でもタピオカ作成に余念がない
もうタピオカブームなどとっくに終わっているのだが、そんなのは優樹菜にとっては関係のない話
匂わせツイート、動画は朝飯前。炎上もお得意な優樹菜にとってプログラムなど恐怖の対象にはならない
「ダメだよ、このドヤンキー。怖いよ。これでほんとにオシャレって言われてたの? カリスマみたいな。こんなドヤンキーが」
影でそう言われるほどのマイルドヤンキーの優樹菜だけに殺し合いに躊躇いはなかったが、支給の武器はタピオカ作成キット
もうこれはタピオカブームの再来を期すのが私の仕事と思い自給自足を始めている
ぶっちゃけ殺し合いとかだるい。恫喝や暴言は得意で、小中学校の時はクラスメイトを不登校に追い込んだりもしていた優樹菜
ある時バイト先で揉めたときなどは、「いい年こいたばばあにいちいち言うことじゃないと思うしばかばかしいんだけどさー嘘ついちゃって、あとひけなくて、漁ってるのばればれすぎだから、今のうちに、謝るとこなり、認めるとこ認めて、筋くらい通しなよ。うそつき」
と言って大暴れ
一部の取り巻きだけにフォローされて天狗になっていたが大炎上し、気づいたらクラスでも浮いた存在になっていた
”事務所総出でやりますね”
プログラムもそう出来たらよかったのだが、悲しいことにこれは個人戦
殴り合いのケンカなら負けないと自負があったが、相手が銃など持っていたらおしまいである
誰か銃を持ってるやつが来たらタピオカ飲ませたろ、と優樹菜は思っている
もちろんただ飲ませるわけじゃなく、毒入りのそれをプレゼントするつもりでいた
今いる現在地につく前に、ホームセンターやドラッグストアでいろいろ仕入れてきていて準備万端である
朝7時半を回ったころ、寝起きの朝食にいつものタピオカドリンクを飲んで優樹菜はまったりと過ごしている
このまま全員が殺し合って、自分だけが生き残る未来。あると思います
今日も早朝から派手な銃声が鳴り響いていたし、昨日も夜になるまでは割と聞こえていた
優樹菜は今に至るまで誰一人と遭遇してないので、もしかしたらワンチャンあるんじゃないかと内心期待している
さあ、今日は何をやって時間を潰そうかと思い立ち上がろうとした時の出来事だった
いつの間にか横に山尾光司が座っていたので、優樹菜は内心動揺を隠せなかったが何とか取り乱さずに済んだ
「おい、俺にもタピオカくれ。あとちゃんこもな」
光司は笑みを浮かべてそう要求してきたので、優樹菜も笑みを浮かべて頷いてみせた
何やこいつと思いつつ、とりあえず自分が飲んでいたのと同じのを渡してしまう
しまった、”毒”入れ忘れたと思ったが後の祭り。おかわりしたときにでも入れてやればいいと思って一人納得させる
受け取った光司は美味そうに一口飲んだが、すぐに首を傾げている
どうしたの?と優樹菜がそう聞いてみると、光司はなぜか激高している
「おい、このタピオカ不味いじゃねーか。もういいからちゃんこをくれ」
まだちゃんこを要求してくる光司だったが、優樹菜はそもそもちゃんこが何かを知らない
「ちゃんこって何さ」
思わず優樹菜がそう返すと、今度は光司が目を丸くして驚いた様子
「お前、ちゃんこも知らないのか。それでよく34年も生きて来たな」
光司はそう言うと、自分のリュックからノートを取り出すと優樹菜に手渡す
「108のメニュー載ってるから。それで作ってくれ」
また無駄に笑みを浮かべて光司がそう言ったので、さすがに優樹菜はムカついてきた
なんやこいつ。殺ってまうか、と
もちろんそんな様子は億尾にも見せずにとりあえずノートを受け取ると、優樹菜は再び台所へ戻る
とりあえず適当に野菜などを切りつつ、それを鍋にぶち込むと一緒に除草剤もしっかりと入れて煮込む大サービス
はい致死量突破。食べて即死亡じゃん、よかったな山尾
あまりにも見た目がアレ過ぎたので、味噌や醤油も大量にぶち込んでとりあえず見た目を整えている
その頃光司はまずいと言いつつ、タピオカをまだ飲んでいる
出されたものはしっかりとのむ、それが光司の心意気
しかし台所から流れてくる臭いは、とても美味しそうとは思えないそれ。地獄絵図にしか感じ取れないやつだったので、内心光司は警戒を強めている
このタピオカおばたん、俺を殺る気だなと直感していつでもぶっ放せるよう銃を手元に手繰り寄せている
さすがにハンドガンは目立ちすぎるので、真怜と恵海から強奪してきたの拳銃2丁をいつでも取り出せるようポケットに忍ばせて優樹菜の出方を伺っている
単なる料理下手で、自分も一緒に食べて悶絶するなら許してやろうと光司は考えている
自分は手を付けず、何かを盛って来てるなら俺は容赦しないぞと。女だろうと俺は容赦なしない
やがて優樹菜が鍋を抱えてやって来た
見た目は割とよさげに見えるそれだが、明らかに食べ物とは思えない異臭。こいつ、俺を殺る気だなと光司はそう感じている
「お待たせー」
しらじらしい感じで優樹菜がそう言いつつ、取り皿と箸を渡す献身ぶり
当然のように自分は食べる気配を見せず、それを光司が咎めると「もう朝ごはん食べたからいらない」と優樹菜は即答
「なぁ、一緒に食おうぜ。俺とお前の仲だろ」
わざわざ調理してくれたのは事実。いきなり殺すには忍びなく思った光司なりの優しさだったが、馴れ馴れしいのが鬱陶しく思ったのだろう。優樹菜はすぐにぶちぎれていた
「うちが作ってやったんだぞ。さっさと食え、このでくの坊」
まさかの逆切れが来たので、光司の心は決まった。即座に2丁拳銃を取り出すと、すぐに優樹菜にそれを突き付ける
「おい、ちゃんこに毒盛りやがっただろ。さっさと死ねアバズレ」
言うが早いか光司は即座に発砲。頭と腹部に見事命中し、あっさり動かなくなる優樹菜に対してハンドガンを取り出して姿形が見えなくなるまで撃ち抜くサービスを敢行した
「このタピオカ女郎。匂わせばっかしやがって、このおばたん!」
光司は恒例となった左手を高くかざす独特のポーズを取ると、台所で朝食のちゃんこ鍋制作に改めて取り掛かり始めた