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噴煙立ち上り、瓦礫の山ができた
その場所には戦車が停止している
きっとその下には木田の死体も

”教室”からは悲鳴がたくさん上がっている
改めて見直すと、意外に広いね、この空間

戦車からは3人の大男が次々と降りてきた
一人は黒づくめ、口元にはひげを蓄えたグラサンの男
もう一人は首にチェーンをまいた、金髪のごつい男
そしてもう一人は、角のようなお面をつけた、異常に頭のでかい男
とにかく3人とも巨漢であった

その後から、ゆっくりといすゞのトラックがやってきて一人の男が降りた
いつものように、”大城工務店”と書かれた作業服を着た

担任の大城康平の姿だった

大城は表情一つ変えず、風呂敷包みをグラサンの男に手渡し、教室内を一瞥するとまもなく
そのままさっきまではびくともしなかったはずの、教室のドアから退出していった

去り際
”いつまでも いつまでも 走れ走れ バトルサバイバル”
”どこまでも どこまでも 走れ走れ バトルサバイバル”
どこか悲しげに、そう歌いながら

一瞬静寂が訪れたクラスだったが、やがてまた悲鳴喧騒が絶えなくなった
状況を理解しきれてない竜也だったが、祐里や夏未が明らかに怯えて震えているのを察したので
二人の手をそれぞれ握った。これって役得にもほどがあるんじゃね?
そして直に目配せし、直も同じように光と梨華の手を握った

それぞれ震えが収まってくるのを感じた矢先

グラサンの男が吠えた

「オイ、ごちゃごちゃうるせーんだよ。オラ、エー?!」

直後にクラスは静まり返る
そして男は続けた

「アイムチョーノ。今日からお前らの担任だ、よろしく」

言って黒板に(黒板があったのに今更気づいた)、超野将大と大書した
振り返り、いつの間にかセッティングされていた教卓にさっきの風呂敷包みを置くと、再び続けた

「お前らは18年ぶりにプログラムのメンバーに選ばれたぞ。感謝しろ」

プログラム

そういえば、聞いたことがある(テリーマンism)

昔々、生徒同士で殺し合いをさせるとかいう、超ふざけた楽しい楽しい国家行事
国民の大反対を受け、完全に廃止されていたはずだがなぜ今更そんなものが

「偉大なる総統の思し召しだ。時は来た、それだけだ」
言って自分で一瞬噴き出しそうになった超野だったが、一人の生徒が挙手しているのを見て一瞥して促した

それを受けその生徒、保諸佳は起立すると間もなく言った
「先生。それはおかしい。僕は皇室のお嬢様のフィアンセなンだわ。その俺が」

そこまで言いかけた佳に対し、超野は先ほど天山と呼んでいた角のお面の男に何かを指示する
間もなく、天山は佳の口元に銃というより、マシンガン? 映画でしか見たことないけど。ランボーとか使いそうなやつ
それをいきなり向けたのだから佳はもちろん喋るのをやめた、というより一気に腰が抜けたのか、その場に転がってしまった

そしてクラスからはまた悲鳴が上がり始める

「おいデザート真壁、こいつらを静かにさせろ。オラエー」
超野が叫ぶと、デザート?真壁と呼ばれた男は風呂敷包みを紐解いた

そこには

首だけになった、変わり果てた菅原将がそこにいた
メガネをかけている。名前がショウ
ただそれだけで、一部からはアップショーと呼ばれていたその男の生首

「こいつは不登校だからな。一人だけ逃げるってのは卑怯すぎだよな」
超野はグラサン越しに不敵な笑みを浮かべた

直後、一番前に座っていた大野洋、菅原と唯一仲が良かったその男はあまりの悲惨さに耐えきれなかったのだろう、思わず嘔吐をし
瞬間、「おいオメー、臭ぇーんだよ」
言うが早いか、超野はズボンから何か(早すぎて見えなかった。銃だった)を取り出すと、いきなり洋に向けて発砲した

どうして逃げられようか、頭をぶち抜かれて洋は即死

幸いと言っちゃあれだが、元から”くさいよう”と揶揄されていた彼だったので、近くに誰も寄っていなかったので
ぶちまけられた脳漿や血の海は誰にも降りかからなかったが
いや、そういう問題じゃない

せっかく収まりかけていた、それぞれ4人の震えは大きくなっていた
というより、宥めていたほうの竜也と直もパニック状態になりかけてはいたが

それでも、竜也は一人脳内であの言葉をつぶやいて必死に心を落ち着かせていた

「Tranquilo,Tranquilo.あっせんなよ」と

(残り33人)