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「以上でルールの説明はおしまいだ。ノーDQマッチ。質問あるやつはいるのか?」

超野の長口上が終わった

かいつまんで言うと
・ここはどこかの島
・拉致されて運んできた(家族には説明済み)
・携帯電話の使用は不可
・最後の一人になるまでの殺し合いデスマッチ
・反則なしのノーDQマッチ
・武器、食料、水はこれから配布
・民家は住民退去済み。家を使うのも、店などにある食糧や道具を使用するのは可能
・首輪は禁止エリアと連動していて、間違って踏み込むと即爆破
・この”校舎”には兵士が大量にいる。生徒たちが束になって掛かってきても、返り討ちになるだけ
・なら殺しあえ。それで生き残れ

だ、そうだ。ばかばかしくて反吐が出る

超野はそこで腕時計を見た
「お、今4時44分か。ちょうどいい、男子1番井場、お前からスタートだ」

超野が指をパチンと鳴らすと、天山と真壁はどこからともなく大量のリュックが入ったカートを押してきた
これがさっき言っていた、武器と食糧
ということなんだろう

「井場。オーケイ、カマーン」
天山が叫んだ。

それに呼応するがように、井場は起立して言われるがまま教卓のほうに向かうと真壁から荷物を受け取った
そこでちょっと立ち止まったが、すぐに超野が銃口を向けようとしたのを察したのか、駆け足で教室を後にしていった

「次は女子1番伊崎。3分後だ」

もう誰も声を発する者はいなかった
発せられる状況ではなかった

しかし竜也はちょっとだけ思案していた
1人3分後なら、もう夏未が出ていくのは時間の問題(女子3番。大野が退場しちゃったから、順番早まってるね)
どこかで待ち合わせて、落ち合えないかな。何とか6人揃って、手段を考えたい

しかし、言葉が纏まらなかった。そもそも自分たちが置かれている場所が分からないし
下手な場所で待たせたら夏未が危険に晒されるだけである
さしもの才媛・光も何も喋らなかった。ただ俯いて思案しているだけ

いつの間にか伊崎は出発していて、大野は退場済み
「脱出方法はありまぁす」と叫びながら小方も姿を消し、いかつい風貌の岡田もクラスを一瞥してから出発した

間もなく、夏未が呼ばれた
直が握っていた手を、「ごめんね」と小さく呟いて離す

「...じゃあね」
言って夏未は出て行った

相変わらず沈黙は続く中、着々と生徒たちは出発していく

高坂は落ち着いた雰囲気で、缶ビールを片手に悠々と出発(あんた何本飲んでるんだよ)
後藤は舎弟・ヨシハチの肩を叩くと、超野、天山、真壁を睨みつけながらの退出
コンビニお姉さんこと里崎も悠然と出ていき、あっという間に直の順番だった

「杉浦、Tranquilo.だぞ。絶対に焦るな」
言い残し、直は出立した

祐里、梨華、光の顔をそれぞれ見て頷いていくところが爽やかイケメンの素晴らしい手口
そら、こいつモテるの当たり前やわ
なんてくだらないことを考えるくらい、竜也はちょっとだけ心が落ち着いてきていたのを感じた

双子のブスなほう(どっちもブスだった、すまん)が出ていき、そして次はまた双子のブスなほう
その次は笹唐(こいつは大嫌い。時が来たらいずれ話す)

刻一刻、祐里の番が近づいてきていた
そしてその次が竜也

運がいいと言っては怒られるが、菅原の退場が好都合な展開になってきていた
祐里のすぐ後に出発できる、ということは合流できる確率は非常に高い

「3分後。合流しよう。どっかに隠れて待ってろ」
竜也がこっそり耳元で囁くと、祐里は小さく頷いた
「待ってる。絶対に待ってるから」

言い残すと、出番が来てしまった祐里は何度も振り返りながら教室を後にした

3分間という時間を、こんなに意識したのは初めてかも知れない
それはとても長く、辛い時間だった

残された竜也、光、梨華は誰一人もう言葉を発することもなく、お互いに見合うこともなく俯いているだけ

「男子9番杉浦。カマーン」
天山が叫んだのを受け、竜也はおもむろに立ち上がった

「水木、タネキ。あとで合流しような」
それだけ言って、竜也は小さく笑った
一瞬ポカーンとした梨華だったが、「誰かお前の姉貴じゃ」と小さく呟いたのを聞いて、右拳を小さく掲げ、教卓のほうへ向かった

真壁がリュックを二つ渡してきたので、1個を返品すると真壁はごついわりに優しい口調で
「サンキューな」と返して、それを受け取った

そのまま教室を後にし、校内を軽く一瞥

うん、各教室には確かに”兵士”が大量にいる
なぜか敬礼ポーズの中年、鼻にテープを巻いたメンヘラそうな中年、などなど
これは言ったとおり、奇襲攻撃しても無駄だろう。そう把握した

いや、今はそんなことを考えてる時間はない。祐里が待っている。急がなければ

「ここはノートランキーロだな。エンセリオ、マジで」
竜也は歩くスピードを速めた

(残り33人)