戻る
Back
Next
「つかあなたたちは、もっと緊張感を持ちなさい」
入ってくるなり、光が説教を始めたので竜也と祐里は顔を見合わせて苦笑いしていた

唐突に現れた来訪者、水木光の公開説教
思わず祐里が着席を求めたので、光はそれに応じた

光の対面に祐里と竜也
水を飲みながら、延々と光は説教を続けた
もちろん完全に怒っているわけではなく、目は笑っていたが

「何なのこの散らかし方。またお子様ビールとか、祐里はどうせまたビール飲もうとしたんでしょ
そして竜ちゃん、あなたもそう。またコーラ一気飲みゲームやったんじゃないの?」

全ておみとぉし!だった。まあ、ずっと一緒にいればわかるか
そして光はまだ続ける

「あのね、一応私たちは厄介なことに巻き込まれてるのよ? ホント、あなたたちは」
そこまで言うと、光は不意に目を逸らして天を見上げた

「だからこそ、私はここに来たかっただけどね。安心した」

状況が呑み込めない竜也と祐里は互いに目を見合わせ、そして互いに首を振った
その二人に気づいた光は、リュックから何かを取り出した

よくあるタイプの、スケッチブックだった
光はそれを開いて見せる

"盗聴されてるから。私が話すことに、適当に相槌打ってね”

予想外の内容に竜也も祐里も驚いたが、わけもわからないまま頷いた
いや、頷いても意味ないんだけど

「私も一人じゃさすがに怖くてね」
光が言って、スケッチブックをめくる
”お願いがあるんだ。私が脱出方法を探る、その間ここで一緒にいて欲しい”

「ハハ、俺らが一緒でも何の役にも立たないと思うぞ」
言って、竜也はその辺に落ちていたチラシの裏にこう書いた
"どうやって?”

「それはそうだけどね。一人でいるよりは2人、そして3人でしょ。毛利輝元公も言ってたし」
光がそう答えた
"タブレット。私専用のね。これでちょっとやってみたい”

「ちょ、光が間違えるなんて珍しくない? 輝元じゃなくて隆元でしょ」
祐里が笑って訂正する。いや、元就だし。光はわざと間違えたんだろうけど、祐里。お前は天然だろ

”大丈夫なの?”
祐里がそう書くと、光は力強く頷いた

「私を信じて」
光はそう言った

まあ、これ以上ない心強いパートナーはいないわけで、竜也と祐里に断る理由はなかった
二人が頷くと、光はリュックからまた何かを取り出して竜也に手渡した

「はい。これあげる」
竜也が受け取って、そして驚いた。つか拳銃じゃん、本物の

「これで私たち2人を守ってね、王子様」
光は冗談っぽく笑った。つられて祐里も笑う

「拳銃か。。ちょっと待って」
言って、竜也は席を外した。取り残された2人を尻目に、すぐに戻ってきた竜也の目にはサングラスが

「拳銃持つなら、こうでしょ。タカッ!」
急に軽い調子になって喋る竜也に、光と祐里は互いに顔を身わせて苦笑い

「あんたさ、サングラス似合わないんだから外しなさい」
祐里に言われ、竜也は渋々「関係ないね」と、サングラスを外した

そしてまた急に竜也が真顔で光に聞いた
「なんでここにいるってわかったん?」
その質問については祐里も同意だった

「その答えはもちろん...」
そこまで言って、光は冗談っぽく笑った

「DESTINO.神様の思し召しよ」
口調は冗談っぽかったが、光は確かな根拠を持ってこの家に絞ったのだった
とにかく祐里のことを気にする竜也の癖から逆算して、そしてリスクを限界まで避けれる場所にいるはず

これはとても自信があった、そして正解だった

「参りました。じゃあよろしくお願いします」
祐里は舌を出して笑ったが、竜也は納得していない様子
いや違う、これはきっとまた何かやろうとしてるなと光が内心思っていると

案の定だった
竜也は立ち上がると、右拳で自分の胸をポンポンと叩いてからそれを天に翳した

いつものアレだ

祐里は笑って同じように立ち上がると、それに拳を重ねた

やれやれ
思いつつ、光も笑ってそれに続けた

「じゃあ後はよろしくね。私は別室にいるから」
言って、光はリュックを持って居間から去ろうとしたので竜也が引き留める

「ちょ、待てよ。俺らは何をすればいいんだ」
竜也が聞くと、光はまた冗談っぽく笑った

「そうね。。じゃあ、祐里と一緒にまたデニー・ゴンザレスのモノマネでもしてればいいよ」

いや、古いし。竜也は内心苦笑した


(残り29人)