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都倉友貴は一人、水を飲みながら思案していた
さて、どうしよう、と

クラスで別段仲が悪い人がいるわけではないが、仲がいい人もいるわけではない
誰を信用できるかはわからない
じゃあ戦って生き残ろうかというと、そこまで決意は固まらなかった

まして、支給された武器はというと

バトントワリング

どうしろと

友貴はダンスに定評があって、体力にも自信はあった
竹田彩乃や豊田愛季あたりにも何度か教えていたし、てっきり文化祭の出し物で使うのかと思っていたのだが
竹田は文化祭で、それこそまた窃盗したんじゃないか疑惑が上がっただけだったし
豊田はギターの弾き語りを披露し、ほとんどの生徒から大ブーイングを浴びていた

文化祭といえば、進藤祐里と水木光も1度だけレッスンしたことがあったわね
「無理だー。私たちはダンスメインじゃなくてよかった」
とか言って、祐里は音を上げていたのは印象に残っている。光も相当ドンくさそうだった

あとは誰だったかな、播磨安比奈か
進藤祐里と水木光の”バンド”のボーカルを狙ってるんだ、とか言って何度かダンスを習いに来てた
結局ボーカルは杉浦になっていたし、ちょっとイケメンの酒樹まで加わっていたが播磨の姿はなかった
まあ、それはどうでもいいお話

都倉友貴自体はまあ、顔もそれなりにいいわけで先輩や後輩からも支持は高かった
ただ、彼女には致命的な欠点
「SNSでの煽り属性」が酷かったのだ

自撮り写真を上げ、髪型を揶揄されると待ってましたとばかりに大暴言連発
全ては努力なのです。覚えてみてね

そうだ、いいこと考えた
友貴は一人でほくそ笑んだ。武器がないなら、誰かから奪っちゃえばいいじゃない、と

まあ、幸いなことにこのクラスは女好きが多いわけで
「何もしないなら帰れ」の山崎達也や、「女体盛り」を好物とする千原嵩
あとは巨乳評論家の井場もいたけど、私はそっち方面には需要がないかも

いろいろ思案したが、とりあえず方針は決まった
男子生徒から武器を拝借し、それで生き残ることにしましょう

女好きといっても、高宮裕太郎あたりはちょっと面倒くさそうなので避けなきゃいけない
友貴はそう思っていた。誘惑するにしても、何をするにしてもレスリング部の猛者相手では小柄な友貴にはちょっと荷が重い

あと違う意味で厄介そうなのは、友貴が思案する
杉浦と酒樹、こいつらは無理だろうなと

酒樹はともかく、杉浦が進藤、種崎、水木、そして河辺以外の女子と話してるところは見たことがないしね
そして酒樹のほうはなんだろう、飄々としているというか掴みどころがない。こいつもきっといい感触は得られないだろう

あ、そうだ。友貴は一人の姿を思い浮かべた
こちらもレスリング部の有望株だが、女子に滅法弱い男が頭に浮かんだ

岡田倶之。そうだ、こいつを私の手駒に出来れば。。
武器を奪う必要すらない、彼ならボディーガードに最適だろう
思ってもいない告白でもすれば、きっと彼はいちころに落ちるはず

だってやつは、生粋のヲタだからね
ヲタは私みたいな女子をきっと好きなはず。友貴はほくそ笑んだ


さて、それじゃ岡田くんを探しに行きましょう
思った矢先、友貴の頭に軽い衝撃が走った

え、なに?
思う暇もなく、またも衝撃。今度はとてつもない破壊力で、痛みを感じる暇もなかった
都倉友貴はあっけなく絶命した

そこには一人の大きな女生徒が、右手に金属製の爪型の凶器をつけて平然としていた
友貴の死体を見ても表情一つ変えず、そのまま去っていった

都倉友貴を撲殺した張本人、豊田愛季は「へいじゅー、どめぎばぁ」と歌いながら、
音も立てずにその場からまた姿を消した



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