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「おい、そこで赤甲羅はやめぇーや」
「はい、また竜の負けー。罰ゲームだよ」

竜也と祐里はマリオカートに勤しんでいた

いや、もう好き放題やるにも限度があるでしょという感じだったが、これは光からの提案
”私が作業してる間は、あえていつも通りに過ごしていて”

その意図まではわからなかったが、言われるがまま手持ち無沙汰になったので「ゲーム」を始めていた、という次第

「竜、今度は何やるん?」
祐里が笑ったので竜也も苦笑い。いや、もうそんなに持ちネタねえし

「やってやるって!」
そう言い、竜也は自分の尻を叩いた。まさかのド演歌ファイター降臨である

「うわ、まさかのエッチューさん」
祐里が目を細めてそう呟く。つかその呼び方、何で知ってるんだよ。。竜也は内心舌を巻いた

「にしても、あんたホントゲーム弱いね。わざと負けてるでしょ?」
祐里がちらっと笑った。まあ、あながち間違ってはないけれども。接待モードってやつ

「にゃ、ゲームはお前のほうが普通に上手いだろ。音ゲーはタネキのほうが上手いけどさ」
これもまた紛れもない事実。つかね、俺シミュレーション担当だからね。どうでもいいだろうけど
シミュレーションゲームなら、そう水木光相手でも絶対負けんわね
光はゲームとか絶対やらないだろうけれども

閑話休題、もうそろそろ昼か
ふと竜也は壁にかかっていた時計を見てそう思った。早いもんだ、もう7時間も経過している
それに気づいたのか、祐里は冷蔵庫のほうに視線を送った

「お昼ごはん、私がなんか作ろうか? 冷蔵庫にそれなりになんかあったでしょ」
もう普通に生活の一部じゃねーかよ、つか新婚さんみたいなどと竜也は一人感じていた
まあ、俺にはその資格がないけどね。けど、絶対こいつはいいお嫁さんになるんだろうなぁ

「つか、お..前? いい加減、その不適切なフレーズはやめなさいよ」
思い出したかのように、また肩幅の広い人が降臨したので竜也はまた苦笑した
「悪い、悪い」と手を振ると、祐里は竜也の目を見ていたずらっぽく笑った

「昔みたいに、”祐里ちゃん”って呼んでもいいのよ」
思わず竜也は吹き出しそうになった。いつからだろう、そう呼ばなくなったのは
気づいたら進藤と呼び捨てにするのが当たり前になっていた。まあ、多分。ガキの時に揶揄されてそう変えたんだろう

「なら。。進藤も、竜ちゃんって呼んでもいいんだぞ?」
竜也は自分で言って笑いを堪えるのが必死だった
つかいまだに親戚や、祐里の両親などは竜ちゃんと呼ぶケースがほとんど。ダチョウ?楽部じゃないよ
そいやなぜか水木は俺のこと竜ちゃんって呼ぶんだよな。まあどうでもいいけど

「いいね、それ。ここから無事脱出できたら、お互いに竜ちゃん祐里ちゃんということで。ハイ決定」
言って、祐里はまた竜也にマリオカートをやるよに促した

脱出、出来ればいいよな。心の底から竜也は思った

そして時計がちょうど12時を過ごした時、外から大きな音が響きだした
竜也と祐里は一旦ゲームを中断し、その音に耳を傾けた。そして間もなく、その場に光もやってきた
「何が始まるんだろ」

「おい、お昼休みはドキドキウォッチングだ、オラエー?!」
超野の声が響き始めた

「残りは28人だ。ペース遅いんじゃねえか? 次は禁止エリアだ」
超野の放送が続いている。笹唐の死を聞いて、竜也と祐里の顔色が変わったのを、光は見逃さなかった

「次は夜6時だ。もっと激しく殺し合えよ、ガッデム」
そう言って放送は途切れた。いつの間にか、竜也と祐里の顔色は真っ蒼になってきている

「笹唐は頭をぶち抜かれて死んでいたわよ」
光は平静を保った声色で、はっきりとそう言った。え?という顔で竜也と祐里は光を見つめた

「やっぱり、笹唐となんかあった?」
光が聞くと、竜也と祐里は二人で目を合わせてから、どちらからからともなく頷いた
それから状況を聞き、光は大きく頷いた

「事情は分かった。まずは、竜ちゃん。お礼を言うわ。。Grasious」
状況が呑み込めない竜也を尻目に、光は今度は祐里のほうを見て続ける

「祐里、怖かったでしょ。ちゃんと竜ちゃんにお礼は言ったの?」
祐里が頷くと、それならいいと光も頷いた

「竜ちゃん、あなたが行った行動は間違いじゃない。むしろ正しい。大事な友達が襲われそうになっていたのを見たんでしょ?
それで助けたのだから、誰もあなたを責めたりはしないわ」

光は一気に言って、一つ息をついた。これは難しい。脱出方法より厄介かもしれない
そう、一歩間違えれば彼のメンタルは死んでしまう
そして、そうなると。。祐里もそのまま消えてしまうだろう

「忘れなさいというのは無理な話だから、そうね。どうしよう」
言って、光は小さく笑った

「笹唐が祐里にしようとしたこと、ここで再現してあげようか?」
光は自分で言って、思わず吹き出していた。その様子を見て、竜也と祐里はまた顔を見合わせ
そして同じように噴き出した

「え、見たくないの? この子は薄いのよ」
光がいたずらっぽく笑って続けたので、「もうええわ」と祐里が軽く小突いた

よかった、ようやくまた空気が戻った

「サンキューな」
竜也が小さく呟くと、光は頷きかけてからすぐにそれを制した

「ごめん、なんか聞こえる。。足音?」
光が言ったので、また一気に緊張が走る

武器、武器。思い、竜也は拳銃を握ると居間の扉のほうへ移動した
祐里と光に背を向けつつ、「なんかあったら一気に逃げてくれ。俺に構うな」
そう言ったが、頷く祐里を尻目になぜか光は妙に落ち着いた様子だった

「竜ちゃん、大丈夫だよ。銃下げていい」
光が言ったと同時に、玄関の戸が開いた

「おう、待たせたな!」
入ってきたのは酒樹直、そして種崎梨華だったので竜也と祐里は驚き、そして光は一人頷いていた



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