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場所はとある廃墟の前、一人の大男・岡田倶之の死体が転がっていた
至近距離から頭をぶち抜かれての即死、岡田の死体は驚いた表情を浮かべたままだった


やれやれという感じで、一人の少女はその場から離れて廃墟の中へ入った
それから何事もなかったかのように首輪を外し、制服から別の”制服”へと着替えを済ませた
背はそれほど高くはないが、細身なのに出るところは出ている理想的なプロポーション
故・井場安理あたりがいたら、絶賛しそうなレベル
「レェェェベルが違うんだよ!」

その少女は、どこからともなく取り出したスマホでどこかと電話をし始めた

「はい、お疲れ様です」
『どうだ、そろそろ疲れたか?』
「はは、まだ12時間も経ってませんよ。ただ、まさかつけられてるとはちょっと予想外でした
舐めてましたね」
『まあお前なら問題ないだろう』
「お..前? ちょっとそれは不適切なフレーズですね。まあ冗談ですけど」
『きっと奴はそこを狙ってくる。誰かは言わなくてもわかるな?』
「ふふ、決まってるじゃないですか。光..水木光ですよね」

少女は不敵に笑って電話を切った
「かかってきなさいって感じだけど。まあまだ2日間もあるからね、まさにTranquilo.よ」



同じ頃、光もどこかとやり取りをしていた
『お待たせしました。やる気になっているのは今のところ3人ですね。豊田、高宮、渡辺です』
それを見て、光は軽く首を傾げた。意外ね、渡辺くんとは。プレミアムな男だと思ったんだけど

『あともう一人。。河辺夏未ですが、気を付けてください』
思わず光は「え?」と口に出してしまった。それから返信「何かあったの?」と

間もなく返答があった
『先輩とIQが変わらないという結果が出てます。もしかしたら、という可能性があります。あと。。。』
『先輩よりスタイルがいいですwww』
「おかもっちゃん、あんたいい加減にしなさい。けどありがと」

そう返信してやり取りを終えた直後、部屋の戸を叩く音がしたので光が振り返ってみると
そこには竜也が立っていた
「よっ、ちょっといい?」

「いいわよ。つか、よく祐里と梨華の監視から出て来れたわね」
光が冗談っぽく笑うと、竜也は真顔で頷いてからハッスルポーズをしてみせた
「俺の横を駆け抜けて行った女は皆妊娠していったぜ」
「黙れDTクローマー」

高速突っ込みに思わず苦笑した竜也だったが、やがて持っていたスケッチブックを開いてみせた
『大丈夫なのか?』と

ん?という感じで光が首を傾げると、竜也は別のページを開いて見せる
『あれだけ音を立ててたら、怪しまれるんじゃないか?』

確かに光もそれは思っていたが、”やり取り”が無事に出来てることもあるし特に気に留めていなかったのは確か
「かかってきなさい」状態だった

「まあ水木が問題ないならいいんだけどさ。悪い、邪魔した」
言って、竜也はまた別のページを開いた
『一応用心してみてくれ。もしかして、ということもあるし。水木に何かあったら困るからな』
竜也は右手を挙げて去って行った

「ったく」
残された光は一人で苦笑していた
「ホント、何でこう鋭いんだろうね」

普段はすっとぼけてるくせに、たまにこういうピンポイントで勘を働かせてくるのが杉浦竜也だった
妙に勘が働く割に、どうしてあんなに馬券当たらないんだろ(うるせーよ、おいby竜也)

となれば、だ。私がやることは

やることがちょっと増えちゃったけど、別のルートも当たってみよう
光はまた別のタブレットを取り出すと、今度は静かに作業をし始めた

「ちゃんと話出来た?」
戻ってきた竜也に祐里が聞くと、無言で頷いてサムズアップポーズをしてみせたので梨華は小さく笑った
「何なのよ、あんたは。光に”ギフト”を届けに行きたいとか、意味わかんないし」
「杉浦はノーコメント」

外はだいぶ暗くなりつつあった
無駄に分厚い斜光カーテンがあったおかげで、電気をつけても外からはすぐにそれとわからない状態なのはありがたかった
さすがに堂々と電気がついている家があったら、襲撃され放題なわけで

「種ちゃん、そろそろ晩御飯作る?」
祐里が小さく笑って聞くと、梨華は小さく頷いた
「じゃあ祐里、早く着替えてきなさいよ」

キョトンとした祐里に向かって、梨華は笑って続けた
「裸エプロンよ、杉浦喜ぶから」

それで祐里が梨華を笑って追い回そうとした瞬間、玄関のほうに人の気配を感じた


「WOW〜 OPEN THE NEW GATE AND FORGET THE SAD DAYS〜」
なぜかノリノリで帰宅してきた直だった
しかしさすがに表情は疲れているように見受けられた

「たらいも。先に一つ謝っておく。河辺は全然見つからなかった。以上」
直は素直に謝罪したが、もちろん誰も責める人はいなかった

「さすがに疲れたわ。ところでばあさん、飯はまだかね」
直が真顔でそう言ったので、祐里と梨華、そして竜也はそれぞれ顔を見合わせて笑った

「おじいちゃん、ご飯は昨日食べたでしょ」
梨華は得意の死んだような目でそう言って、祐里と一緒に晩御飯の支度を開始した



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