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「ベッドの上でイっちゃうぞバカヤロー! これマジ!」

高宮裕太郎は黄昏ていた

いつものように女子2人をテイクアウトしての、ホテル休憩
「5600円くらいのところに泊まればええやん」
まあ、今日は無料なんだけれども

そのうちの1人・高橋李依は風に当たりたいと言って窓際に佇んでいて、もう1人の里崎春賀はすでに熟睡していた

レスリング部の猛者で知られ、「Mr.R指定」という異名を持つ裕太郎であったが、授業態度に関しては真面目一筋であった
朝の登校は常に1番乗りで、テストの成績はまあそれなりではあったが

裕太郎がそもそも「R指定」キャラになったのには理由があった
レスリング部に入って怪我を負ったまま大会に出て、見事に惨敗
その憂さを晴らすように下ネタに走ったというわけだ
元々ルックスも悪くはなかったので、自然に女子も集まってきてキャラが固定されたというだけの話。これマジ

そして今年こそはと満を持していたのだが、またも首を負傷してしまっていた
日常生活(夜のほうも)には何も問題ないのだが、大会となると厳しいと言われていた時に、このプログラム
よかったというべきなのか、悪かったというべきなのか。裕太郎は測りかねていた


特に殺し合いをする気もなかったのだが、校舎を出てすぐ笹唐を射殺してしまったことには一切の後悔はなかった
「女子の敵は、俺の敵。これマジ」

笹唐の進藤祐里への怨念はえげつないものだと、常に裕太郎は感じていた
またなにかやらかしたら、シメてやろうと思っていたのもまた事実
「杉浦ちゃんの彼女は美人だねぇ。俺もベッドの上で昇天したいなぁ、これマジ

まあ、俺のタイプではなかったけれども
俺が好きなのは、バスケットボールみてぇなオッパイのネーチャンだけだよ!もちろん夜はベッドの上でスラムダンク!
…これマジ

いつものように2人とバトルした後、裕太郎は特に感慨もなく無為に時間を過ごしていた
荒武者のように暴れ回る俺のマシンガンはまさにベッドの上のジーニアスだ!
回数は…NO LIMIT…これマジ

しかしこのまま2日経つと、別の場所に逝くことになるのかと思うと内心笑えていた
地獄でもおっパブなう!...これマジ


そんな時だった

「なんだろ、これ。緑と赤のイルミネーション? ちょっと奇麗かも」
外を見ていた利依が呟いた
裕太郎はそれにつられて外を見てみると、確かに緑と赤の光線?みたいなものが暗闇を照らしていた
暇なやつもいるもんだな、程度に思って裕太郎は窓から離れた

直後
何が起きたかわからないうちに、いきなり窓が一気の爆発で消し飛んだ

?!
裕太郎が思う前に、高橋李依は木っ端微塵となって消え去った

「おい、里崎。早く逃げろ。これマジ」
言って里崎春賀を起こそうとしたが、どんだけという感じの爆睡で起きやしない
そしてさらに追撃の爆風からの爆発。裕太郎はかろうじて逃げ出したものの、里崎春賀はそのままお陀仏してしまった

「なんなんだよ」
裕太郎が外に飛び出すと、そこには不気味な笑みを浮かべた渡辺享明の姿があった
どうやらロケットランチャーをぶっ放してくれたらしい、地面に投げ捨てられていた

「お前は顔じゃねえんだよ。中途半端な存在、それが一番の悪なんだよ、わかったかこの野郎。
そしてこの俺が一番の正義で、本物で、頂点だ。よく覚えとけ」

享明はそう叫ぶと裕太郎の前に突進して、ふいにしゃがみこんだ
裕太郎は何が起きたかわからないまま、股間に強い衝撃を感じてうずくまった
まさかのローブロー攻撃に声も出なかった

「終わりだ」
享明がまた、どこからともなく鎌を取り出して裕太郎の首を掻き切った


同じ頃

海辺に2人の影があった
どこから移動してきたのか、白鳥のボートを必死に押す二つの人影

「うわあああーああん!この世の中、うあー世の中を……ック変えだい!」
いつものように泣き叫ぶ野々垣慎太郎、そしてもう一人は
「白鳥ボートはありまぁす」
いつものように叫んでいる、鼻フックをしてるような特徴的な鼻を持つ小方晴恵

二人はどうやら、暗闇に紛れて決死の逃避行を敢行する模様であった

「プログラムは大事ですけれども、生徒という大きなカテゴリーの中では、ごくごく小さいものなんです」
意味不明の言動を発しながら、足漕ぎボートを漕ぎ出す野々垣
しかし小方との呼吸が合わないのか、なかなかボートは前に進もうとしなかった

「前に進む方法はありまぁす」
「厳粛願いませんでしょうか!」

喚き散らしながら必死に漕ぐ二人の期待に応え、ようやくボートは前に進み始めた

”そこのボート、早く引き返しなさい”

海上にいた監視船からの警告を無視し、二人は必死に漕ぎ続ける
単にその警告が聞こえないくらい喚いているだけなのだが

案に違わず、船から銃撃が飛んできた

当たってもいないのに、「痛ーい!!痛い!!」 と野々垣は泣き叫んだ
「助けてー!!助けて!!」
そう連呼しながら、それでもボートを引き返そうとはせずに前進気勢を止めなかった

「警告には一切応じないので逃亡への進行を妨害しないように」
「もし攻撃等の行為をしてくるならカメラ撮影で証拠の映像を撮り、110番通報し訴える」
野々垣はそう叫ぶと、頭の毛の帽子を取ってからスマホのカメラを監視船のほうへ向けた

直後、銃撃が再びボートをしっかり襲ったので二人はあっさり海の底の藻屑と消えた

「涅槃はありまぁす」
と小方が言ったかどうかは、定かではなかった



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