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友利悠衣は稜西高校生徒である前に、国家秘密組織「The Elite」のメンバーであった
プログラムを円滑に行るための監視役。平たく言えばそんな感じ

保諸佳の動向を見ながら、プログラムを行うかどうかをチェックする役目を負っていた

保諸が”皇族”と無事に破局すれば、プログラムは実行されないというのが表向き
実際は国民のストレスの捌け口として、強行するのは既定の事実でもあった

そしてプログラムは無事開催されたので、今の役目は「不正」を行う生徒の監視役であった
現状で言うと、水木光が露骨に何かを仕掛けて来ていることはわかっているのだが

上層部にそれを報告すると、
”水木光”の知能は惜しい。完全に逃亡を開始する以前の、首輪爆破は認めないとの通告があった

「まどろっこしい。さっさと爆破しちゃえば済むのに」
内心そう思った悠衣だったが、表向きは平静を装っている

まさか「監視役」がクラス委員長を務めるとは、誰も思わなかったでしょうね
そのまさかのため、あえて自分から立候補をしての委員長だった
野々垣との一騎打ちだったが、34-2という素晴らしい票数での当選

何事もないように装い、学校生活を堪能していた悠衣
誰も怪しむ者はいなかったどころか、かなりの信頼を集めてすらいた

ただ一人、進藤祐里だけは「住む世界が違う感じ」と何かを察していた感を出してはいたが
まあ気づかなくてよかったね、と
感づいてたら、「お前は知りすぎた」で、消されていたわけなので


そうそう、河辺夏未のスマホを拾えたのはついてたわね。天の思し召しかしら

たまたま林の中を歩いている時に拾ったスマホを、何かの役に立つと思って悠衣は一応拾っておいた
水木光が何かをしているのが分かったので、夏未のスマホで挑発をして動揺を誘うことにした
”2時間起きにでも定期連絡してあげましょう”

水木光の考えは読めている
廃墟は廃坑に繋がっていて、そこから地下トンネルを通ると本州に出ることができる
間違いなくここを狙ってくるということで、ここで待てば楽よね。ということで悠衣は廃墟で待機を決め込んでいた


一晩明け、のんきに朝食を食べてからシャワーを浴びて戻ると、招かざる来客があったので悠衣はさすがに驚いた
達也は、悠衣が外していた首輪を手に取って楽しそうに、んほぉっていた

「なあ友利。お前、プログラムしないなら帰れよ」
達也は友利に首輪を見せつけてきた
「そういうことか。お前がThe Eliteだったとはな」

悠衣は達也に攻撃を仕掛けようとしたが、手元に銃がないことに気づいた
それに気づいた達也は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべた
「お前の探してるのはこれだろ? 俺はいつでもお前を殺せるって算段だな」

悠衣はこのやり取りの間の一瞬で判断を下した
”とりあえず様子を伺うか。銃さえ奪えば余裕だしね”

「よく気づいたわね。どうやったの?」
悠衣が聞くと、達也はポケットから双眼鏡を取り出した
「これだよ。何となく覗いてたら、お前の着替え最中でな、ついでに首輪外してるのが見えたからな。
まさに、時は来たってやつだ。んで朝にお前がいなくなってるのが見えたから、ちょっとお邪魔しただけだよ」

達也は不敵な笑みを浮かべた。その目線は悠衣の体をまじまじと見つめている
その目線に気づかないふりをして悠衣はまた訊いた
「で、何が目的。ただ”遊びに来た”わけじゃないでしょ?」

それを受けて、達也はまたニヤッと笑った
「察しがいいな。まずは首輪を外せと言いたいところだが、寝首かかれそうだからそれはやめといてやるよ」

”チッ”悠衣は内心舌打ちした。近くに寄れれば、それくらいは簡単にヤれた自信があったのに

「俺は狼になりたい。ワンナイトしよう」
達也は涼しい顔で言ったので、さすがに悠衣は愕然とした。何言ってるのこいつ。獣か何か?

返事がないので、達也はまたも舌なめずりをしながら悠衣の全身を見渡す
「友利のハミダシモノがデカダンスだな。さあ一戦交えようぜ」
もう悠衣は呆れて声も出なかった。ダメだこいつ、何とかしないと

「俺はお前に全部を見せることができる。お前も包み隠さずに見せてみろ」
言うと、達也はシャツを脱いで上半身裸になった
シャツを脱いでるタイミングが攻撃できるチャンスだったのだが、悠衣はあまりのバカバカしさにそれをすることすら忘れていた

相変わらず悠衣の反応がないことに、達也はいい加減切れてきたのか表情が険しくなってきていた
「何もしないつもりかテメー! ふざけんなよ!」
怒号を上げ、拳銃を悠衣に近づけた

「さあ選べ。俺とHEAVENに行くか、銃で涅槃に行くか。お前次第だよ」
再び達也は不敵な笑みを浮かべた

しかし、達也はあまりにも不用意に近づきすぎていた
悠衣は内心思っていた。もう少し近づきなさい、と

そして、その時が来た

「あなた、病気ですよ」
悠衣はそう言ってにっこり笑った。その笑みを”行為(好意)”と勘違いしたのか、達也はさらに近づいて悠衣の肩に触れる距離まで寄ってきた

「崖っぷちにいるんじゃなく、既に崖の下に落ちていることに気付いていないのね」
悠衣はそう言うと、達也から銃を奪い取るとあっという間に組み伏せた

一瞬の早業。達也は何が起きたのかわからないまま、呆然とし。。やがて気づいたのか、命乞いを始めた
「謝っても謝り切れません。本当に申し訳ない。だから殺さないで...」

悠衣はそれを聞いてにっこりと笑った
「どのような顔をしてここに出てきたの? もし逆の立場ならあなたは私の命乞いを許すのか。それはとてもずるい行為よね」

言うと、悠衣は躊躇いもなく引き金を達也の頭部に向けて3度引いた

噴煙上がる中、悠衣はまたどこかへ電話を始めた
「ごめんなさい、死体をまた一つ片づけて欲しいんだけれど」



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