渡島監督の『コイントス』により、先攻は白組に決まっている
それにより、奈乃香による白組のスタメンが発表された
1番サード久友 2番ライト万田 3番ショート千葉 4番ホワスト千原 5番センター和屋 6番セカンド御部 7番レフト中野 8番キャッチャー近藤 9番右内という、なかなかサプライズ満載の構成
「玉子ショートて。思い切ったなこれ」
竜也がそう呟いてると、1塁側ベンチから浩臣の大きな声が届いてくる
「玉子てめえ、スタメン勝手に変えるな」
声こそを大きいが、怒りは感じられないそれ。呆れているのか、諦めているのかはわからないが
『続きまして紅組のスターティングメンバー』
無駄にDJチックに祐里が読み上げ始める。どっかでDJやってたのこの人、と思わせるレベルで様になっている
1番センター貴崎 2番ホワスト高井 3番セカンド草薙 4番ショート岡田 5番キャッチャー樋口 6番サード須磨 7番ライト大杉 8番レフト冬井 9番投手小沢
順当かつ、勝つためだけに選んだ精鋭が揃っていると竜也が自負する完璧なスタメンが準備されている
「勝ちましたねこれ。私ギターでも弾いてていいですか?」
第3マネージャーの青井がやる気なさそうにそう話しているので、祐里が今度セッションしようかと声掛けをしている
「って俺センター?」
今更ながら驚いた様子の竜路に対し、大杉と冬井はそれぞれ笑みを浮かべて近づいている
「俺たち、守備範囲狭いからよろしく」
竜也もそれは承知しているので、小さく頷いている。内野は完璧に近い形で組めたが、外野は完全に打力だけ
まあ全員使わなきゃだから、早め早めに変えていくから問題ないだろうさ、シランケド
「あ、そうだった。俺サインは出さないから。メンバー交代だけやるんでよろしく」
竜也がベンチの全員にそう声をかけると、苦笑なのか笑い声なのか一斉に声が上がっていた
「向こうは楽しそうだね」
安理がそうぼやく中、浩臣は一人頭を掻いて投手のリストを眺めている
右内、久友が2イニングずつをどう使うか。あと1年の投手で3イニングをどう賄うか
「私なら伊藤を3イニング投げさせるが」
指名通りしっかり1塁ベンチに入っている渡島がそう茶化すと、勘弁してくださいと言って浩臣は苦笑している。いや、確かにそれで終わるんだけどという思いもあったが
「それにしても千葉3番とは思い切ったな...で、どうするんだ?」
スタメン改竄したことをしっかり理解している渡島が囁くと、浩臣はニヤリと笑みを浮かべている
「問題ないですよ。楽しみにしててください」
言って、軽く力こぶを作って見せていた
さすがに始球式までは行われず、プレイボールがかかる
1年ながら、小沢は巧みなマウンド捌きを見せて上々の立ち上がりを見せている
「小沢、いい投手ですよ。中学では無名でしたけど、いいボール投げるのは知ってました」
いつぞや竜路がそう話していたのを覚えていて、抜擢した自分の眼力を褒めてあげたい気分になっている
「あいつチャラいんですけどね。村山(もう一人の1年マネージャー)をいつも口説き倒してますし」
青井がぼやきつつ、やれやれといった表情を浮かべている
「チャラいだけじゃなくて、暴露しまくりですから。皆さん気を付けてくださいね」
とんでもないことが聞こえた気がしているが、あっという間に2アウトになっている。小沢デビュー登板は上々といったところ
ネクストで待機していた安理が打席に向かおうとすると、白組ベンチから村山の声が響き渡った
『バッター千葉に代わりまして、中島』
唖然とする安理をしり目に、ベンチからはバットを持った小太りの演歌大好き強面1年生が登場してきた
両軍ベンチ爆笑の渦の中、小沢と中島の同期ライバル因縁対決が行われる
結果は中島はしぶとくレフト前に運ぶヒットで、小沢は悔しそうにマウンドを蹴っている
4番千原を抑えて初回無失点。拍手で迎えられる紅組ベンチに戻ると見せかけて、小沢は1塁ベンチに向かい村山に声をかけ、派手に玉砕していた
あははと祐里に笑われる中、小沢は神妙な顔もちで戻っていた
「まずは先制点。頼みますね」
竜也がなぜかスコア付けに集中しているので、“代行”の奈乃香がそう声をかけている
竜路が竜也にアドバイスを求めると、竜也はニヤリと笑みを浮かべている
「いつも言ってるじゃん。人がいないとこか、人がたくさんいるとこ狙えって」
言って、竜也は1塁ベンチを指差している
「今日は無観客だからな。人が多いとこだと相手ベンチになっちまうんだけど」
アドバイスにすらなっていない返答で、また3塁ベンチは湧き上がっている
困惑している竜路に対し、祐里がさらなる追い打ちをかけている
「今のアドバイス、アレ世界の王さんの受け売りだからね。あいつはいかにも自分で考えてみたいに言っているけどさ」
唖然としている竜路に対し、追い打ちをかけるように球審那間からバッターラップの声
おい、ネタバレすんなと竜也が祐里に苦言を呈しているが、あははと笑われて返されていた